HR事業者に必要なのは、売り込む力よりつながる力かもしれない

持続的な案件獲得を生む「つながり」の本質

HR事業において、営業力を高めようとする際に真っ先に考えるのが「売り込みの技術」だ。しかし、長期的に安定して案件を獲得している事業者が持つのは、売り込む力よりも「つながる力」である場合が多い。

つながる力でHR事業を成長させている事業者のイメージ

売り込み営業が機能しにくくなった背景

かつては、電話や訪問による積極的な売り込みがHR業界の営業の主流だった。しかし現在、この手法の有効性は大きく低下している。理由は複数ある。

まず、HR領域のサービスが増加し、企業側は「売り込んでくる会社」に対して警戒感を高めている。「また営業の電話か」という反応が増え、最初の接触でネガティブな印象を持たれてしまうケースが珍しくない。

次に、インターネットの普及により、企業側は自ら情報収集をして比較検討するようになった。「教えてもらう」よりも「自分で調べる」スタイルが定着したため、売り込みのタイミングと企業の検討タイミングがずれることが多くなった。

また、HR領域はサービスの効果が見えにくく、「この会社が本当に信頼できるか」という判断が、実績や口コミに依存する割合が高い。初対面での売り込みで信頼を構築することは、構造的に難しい業界だ。

このような環境下では、売り込む力を高めることへの投資対効果は低くなりやすい。代わりに機能するのが「つながる力」だ。

「つながる力」が案件を生む仕組み

つながる力とは、HR業界の人たちや企業の担当者と、継続的に関係性を持ち続ける能力だ。これは単に名刺を集めることではなく、相手の記憶に残り、必要なときに「あの人に連絡してみよう」と思われる存在であることを指す。

つながる力が案件を生む仕組みはシンプルだ。業界内での信頼関係が蓄積されると、「あそこに頼んでみたら」という紹介が自然に生まれる。また、過去に接触した企業担当者が転職や部署異動で新たな人事課題に直面したとき、「そういえばあの会社に相談してみよう」という想起が起きる。

売り込みは、企業が課題を感じていないタイミングに接触することが多い。一方、つながりは、企業が課題を感じたタイミングに自然と想起される。このタイミングの違いが、受注率の大きな差につながる。

つながる力を高めるための具体的な行動は、定期的な接点の維持(SNS、イベント参加、メッセージなど)、有益な情報の共有、相手の課題を聞く姿勢の維持、そして自分の専門性を継続的に発信することだ。どれも地味に見えるが、積み重ねることで強力な資産になる。

つながりを「事業の資産」として設計する

多くのHR事業者は、つながりを「偶然生まれるもの」として受け身に捉えている。しかし、つながりは意図的に設計し、育てることができる事業の資産だ。

まず、どのようなつながりを持ちたいかを明確にすることが必要だ。自社の顧客層(中小企業の経営者、大企業の人事部門など)とのつながりを優先するのか、協業相手となるHR事業者とのつながりを優先するのかによって、アプローチする場や行動が変わる。

次に、つながりを維持するための「接点の設計」が必要だ。コミュニティへの参加、定期的な情報発信、勉強会の主催や参加——これらをランダムに行うのではなく、「誰と接点を持つか」を意識した上で選択することで、質の高いネットワークが育まれる。

また、つながりは双方向的なものだ。相手から何かを得ようとするだけでなく、自分が相手に価値を提供できているかを意識することが、関係性の深化につながる。HR業界では、知見の共有、案件の紹介、相談への対応など、相手に価値を提供する方法は多い。

つながる力は、短期的な営業成果には直結しにくい。しかし1〜2年のスパンで見ると、売り込み営業を続けてきた事業者より、つながりを育ててきた事業者の方が、安定した案件獲得と顧客との深い関係性を持っていることが多い。

まとめ:つながる力が事業の持続可能性を決める

HR事業の持続可能性は、売り込む力ではなくつながる力に依存している。業界内での信頼関係のネットワーク、顧客企業との継続的な関係性、協業できるパートナーの存在——これらがあって初めて、安定した事業運営が可能になる。

売り込み営業を否定するわけではない。しかし、そこに全てのエネルギーを注ぐよりも、つながりを育てることに時間と労力を使う方が、長期的な見返りは大きい。

今日から、自分のつながりの資産を棚卸しし、どこに接点を増やし、どの関係性を深めるかを意識してみることが、HR事業の新しい成長戦略の出発点になる。

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